亀鑑

2009/08/01

近所の寺で、お施餓鬼がありました。この寺の本堂には竹に文字を刻んだ、一対の聯(れん)が掛かっています。
聯というのは、まあ柱掛けで、柱の飾りのようなものです。ここの聯には右のような文字が刻んであります。「亀鑑」というものです。管理人がいた僧堂でも、摂心前の総茶礼には、老大師が読まれ、我々は頭を畳につけ拝聴するのでした。この亀鑑が聯になっているのは珍しい(他所では見たことがない)と思います。
カメラで撮ろうと何度か試みてうまくいかなかったのですが、住職さんのカメラを借りて今日撮ったのは、まあ何とか見られる物になりました。

読み下しは記憶に依るものです。鈴木大拙氏の著作の中にはあったような気がしますが、全く同一の物であったかどうかは、不確かです。が、がんばって読んでみました。ここをごらんになった方で「違うんじゃないか」と思われた方は、是非ご連絡を。

  • 亀鑑
  • 禅門之徒参得古則吾宗第一公務也
  • 然近代蒙昧之輩不知先徳之方便
  • 唾擲古則不許参詳
  • 學者錯聞上件之説墮在鬼窟
  • 蔑視古則空誇久参
  • 可悲可笑 矣
  • 入我會裡者各自隨分疑着話頭
  • 如救頭然疑来疑去打破大疑團
  • 跳出生死窠窟 須徹古人心髓
  • 豈翅得自身安楽
  • 報佛祖深恩足 矣
  • 何波々役々空過一生 勉 焉
  • 右 悉照
  • 亀鑑(きかん)
  • 禅門(ぜんもん)の徒(と)古則(こそく)に参得(さんとく)する事は吾宗(わがしゅう)第一(だいいち)の公務(こうむ)也(なり)
  • 然(しかる)に近代(きんだい)蒙昧(もうまい)の輩(ともがら)先徳(せんとく)の方便(ほうべん)を知らず、
  • 古則(こそく)を唾擲(たてき)して参詳(さんしょう)することを許さず
  • 學者(がくしゃ)錯(あやま)って上件(じょうけん)の説を聞いて鬼窟(きくつ)に墮在(だざい)し
  • 古則(こそく)を蔑視(べっし)して空(むなしく)久参(きゅうさん)と誇(ほこ)る
  • 悲(かな)しむべし、笑(わろう)べし 矣
  • 我(わが)會裡(えり)に入る者は、各自(かくじ)分(ぶん)に隨(したが)って話頭(わとう)に疑着(ぎちゃく)し
  • 頭然(ずねん)を救(すく)うが如(ごと)く、疑(うたがい)来(きたり)疑(うたがい)去(さって)、大疑團(だいぎだん)を打破(だは)し
  • 生死(しょうじ)の窠窟(かくつ)を跳出(ちょうしゅつ)し 須(すべからく)古人(こじん)の心髓(しんずい)に徹(てっ)すべし
  • 豈(あに)自身(じしん)の安楽(あんらく)を翅得(うるのみならんや)
  • 佛祖(ぶっそ)の深恩(じんお(の)ん)に報(むくいる)に足(たる) 矣
  • 何(なん)ぞ波々(はは)役々(えきえき)として空(むなしく)一生(いっしょう)を過(すご)さん 勉(つとめ)よや 焉
  • 右 悉照

亀鑑が刻んである聯

老大師は、亀鑑を読まれるに当たって、独特の節回し(といってもいいと思う)をもってされました。まるで謡うが如くでした。まねはできませんが、そのことが記憶に残っています。

管理人がお世話になっていた僧堂の亀鑑では「鬼窟」の部分は「鬼窟裡」(きくつり)となっていました。(記憶がある)(ような気がする)(気のせいではないような)